【絶妙な塩加減のさんまの塩焼きを狙う!】さんまの塩焼きのコツvol.1

さんまが今年は豊漁で、しかも1尾が大きい!

ここ数年は「さんま1尾でこの値段か…」と買う気になれないことも多かったですが、
今年は気軽に買えて楽しんでいます。

みなさんは、いかがですか?

数日前から関西も蒸し暑さがやわらいで涼しくなってきて、

ちょうど「さんまが食べたい!」という気分になってきました。




さて今日は、質問をいただくことがとても多い

「さんまの塩加減」についてお話ししたいと思います。


今日から、私のLINE公式を読んでくださる方が非常に多く

「さんま一つに、こんなに情熱を持って語るのか!」

と驚かれるかもしれませんが、いつもこんな感じですので、よろしくお願いします。

  ***

さんまの塩焼きって、とてもシンプル。

表面がパリッとこうばしく焼けて、私は表面に塩の結晶がカリッとしているのが好き。

塩の結晶っていうのは、じーっと見たときに
白い塩が浮いて固まっている、アレです。

そして、箸を入れると、
中はしっとり、ふわっと湯気が上がってきて
脂がのっている。

最高!

すだちをキュッと絞って
大根おろしに、しょうゆをかけて、添えて食べます。


塩加減が絶妙に決まると、
さんまのおいしさはぐんと引き立つんです!

しょうゆは、アミノ酸のうまみと、風味や香りをプラスする役割。

しょうゆをかけるから、塩味は適当でも、しょうゆで加減すればいいよね、ではないのです。

この塩味が絶妙だと、

たった1尾のさんまが、ズキューンと刺さるおいしさになります。


みなさん、
今までのさんまの塩焼きって、

もっと無意識に、作っていたと思うんです。


ハッとするくらいのおいしさ♡

を狙っていきますよ。
 
 
 
私の専門は「調理科学」。

実はこのテーマ、調理科学の視点からめちゃくちゃ語りたいことがあるんです。


今回のLINE公式は、
話が長くなるので、数回に分けてお届けしますね。

今週は「さんまの塩焼き」一本でいきますので、ぜひお付き合いください。


みなさんの中にも、

「さんまの塩加減ってどうすればいいの?」と気になって、
ネットで調べたことがある方はいませんか?

●塩をふって、すぐ焼く。

●塩をして、15~20分おく。

だいたいこの2つに分かれていますよね。


そして私のところに質問が届くときは、
「結局どちらが正解なんですか?」と聞かれることが多いです。


私は<レシピのいらない料理術>という料理教室を主宰していて

講座生さんが、いつどんな質問をしてもいいですよとしているのですが
毎年聞かれることですし

プロ向けの講演会でも、先日お話ししたところです。


でも料理って、正解がひとつとは限らないのです。

だからこそ、背景を考えて「なぜこの工程をとるのか」を調理科学で裏づけする。

それが私の仕事です。


例えば、ある雑誌(A)で料理人の方が

「さんまはすぐに塩をふって焼きます」と書いていたら、

私はその背景を考えて
どういうおいしさを狙ってそうしているのかを
科学的に説明することができます。

別の雑誌(B)で「塩をして15~20分おきます」とあれば、
しばらくおくことで何がいいのか
なぜおいしくなるのかを科学的に考察できます。

実際、その料理人の方自身もAもBも両方試してきて、

経験の末に「自分はこのやり方が一番いい」と行き着いているはずなのです。


さらに、店に取材が来た時に

いつもは、Aの方法をとっていても、

雑誌の読者を想定して、Bのやり方で紹介することもある。


もちろん「いやいや、どんなさんまでもAでしょ!」という方もいるかもしれません。

つまり大事なのは「どんな味を狙っているか」。

どちらのやり方も、調理科学的にはちゃんと意味があるのです。
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こういう背景を踏まえて、「なぜ?」を科学の目で解説していきたいと思います。
といっても、奇をてらった独自のやり方ではありません。

メディア的にはそういう方が、ウケそうですが
私って、たぶん「硬派」なんですよ。

私は調理科学を専門にしていますが、

私自身、調理師学校を卒業していますし、
今でも調理師学校の日本料理の学生さんたちに教えているので
日本料理のセオリーから外れたことはしたくありません。

ただ、このさんまについては、誰かに習ったやり方をそのまま真似ているわけではなく、

科学的な裏づけをもとに、

「スーパーで買ったさんまでも」

「誰が焼いても」

「今までの自分のさんまの塩焼きを、超えるくらいおいしくできる」ことを目指しています。


というわけで今日はまず、
私が「これが一番おいしい♡」と思っているやり方を、

明日、これを読むとできるように
シェアしますね。
 
【用意するもの】

① さんま

② 粗塩(ベタつきがあって「にがりが多い」もの)

③ 焼塩(伯方の塩などから出ています。粗塩はベタついて振りにくいので、焼いてサラサラにしたタイプです)


塩は2種類を使い分けます。


【1.さんまの塩の量】

これ、めちゃくちゃ大事です。
塩をこのくらいかなとパラパラふると、たいてい少ないです。

塩は、さんまの重量の1%にしています。

1尾(150g)につき、1.5g(小さじ1/4)ですが

今回は、その半分を粗塩に、残りを焼塩にしています。


<4尾分焼く場合>
4尾で
粗塩 小さじ1/2
焼塩 小さじ1/2

<2尾分焼く場合>
粗塩 小さじ1/4
焼塩 小さじ1/4


計量スプーンは塩をはかるときに、小さじ1/2があると便利です。100均で探してみてね。



【2.さんまを水で洗う】

「魚って洗うの?」とよく聞かれます。

切り身は洗わないですが、頭つきのさんまは洗います。

まず表面にうろこがついていないかチェック。
たくさんついていたら、包丁で軽くなでて落としてください。

これで生臭みが少し抜けます。
最後はペーパータオルでしっかり水気をふき取って。


【3.粗塩をまぶす】

1尾ずつ均等に粗塩をまぶします。

粗塩はパラパラとふれないので、手でなじませて。

素手が苦手な方は100均の使い捨てビニール手袋がおすすめ。

水分が出るので、まな板の上より、さんまの入っていたトレイを洗って使うほうが扱いやすいです。




【4.15分おく】

時間をおくと水が出てきます。

このときに生臭みの成分が、水に溶けて抜けるのです。

粗塩は、魚の生臭みを取る効果が高く、
塩味も、塩のカドが立たずに、まろやかでおすすめ。
ただし15分以上おくとしょっぱくなりすぎます。




【5.表面の水分をペーパータオルでふき取る】

水で流すと塩気が抜けるので、ペーパーでふき取ってください。

この水分は生臭さの元なので、きちんとふき取ります。

しかも、表面に水分が残っていると
次にふる塩が溶けてしまいます。


【6.改めて焼塩を両面にふり、すぐ焼く】

なぜまた塩をふるのか?

焼き上がりに表面にカリッと塩の結晶が残る感じが好きだからです

◎最初の塩=生臭みを取って塩味をなじませるため。

◎直前の塩=皮をパリッとさせ、表面に塩の結晶が浮いたカリッと感を出すため。

2種類の塩で仕上がりに違いが出ます。




【7.魚焼きグリルで焼く】

両面焼きグリルなら7~8分。

焼き過ぎるとパサパサになるので注意。

新鮮なさんまなら
ギリギリを狙って焼くと最高です。
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もっと語りたいことは山ほどありますが、

今日は手順とコツだけ、さらっとまとめました。

この通りにすれば、明日から
「絶妙な塩加減で」さんまが焼けますよ。

さんまを洗うところから、焼き上がりまで30分。

仕事帰りでもできます。

明日以降は「このコツは、なぜそうするのか?」を
もう少し詳しく説明しますね。


 
<レシピのいらない料理術>主宰
調理科学 評論家
 
木村 万紀子
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