【粗塩と焼塩の2種類を、さんまにふるのはなぜ?】さんまの塩焼きのコツvol.3
「ふだんおいしいなんて言わない旦那さんが、
“おいしい!おいしい!”って連呼してましたー!」
(愛知県 さとこさん)
さんまに塩をふって焼くだけ。
なんてことない料理のはず。
きっとご主人も、特別な期待もせず、パクっと口に運んだと思うんです。
それがね、
ハッとするおいしさだった。
「おいしい!おいしい!」と何度も言ってしまうくらい。
いやぁ、これは本当にうれしいですよ。
シンプルな料理が「おいしい!」。
これ、とても大事なことなんです。
シンプルがゆえに、
「おいしい」が、ダイレクトに本能に刺さってるから。
*****
Vol.1では、調理科学の観点からおいしさを引き出す
<さんまの塩のふり方>をご紹介しました。
「もう一度確認したい!」という方は、まずはこちらからどうぞ。
https://science-cooking.com/?p=7296
https://science-cooking.com/?p=7315
☆一般的な方法との違い☆
(1)さんま2尾にふる塩の量は?
粗塩 小さじ1/4
焼塩 小さじ1/4

左:粗塩、右:焼塩
(2)まず粗塩をまぶして、15分おく。


(3)水分をふいて、焼塩をふって、すぐに焼く。

――と解説しました。
ではそもそも「粗塩」と「焼塩」って、どう違うのでしょう?

こちらはスーパーでよく見かける「粗塩」と「焼塩」。
粗塩のパッケージをよく見ると、
“にがりを含んだ”と書いてあります。
(つまり、にがりを含まない塩もあるということね。)
この「にがり」って何がいいの?と思いますよね。
そもそも、塩のしょっぱさは「塩化ナトリウム」の味。
次の写真を見てください。

赤穂の天塩のHPから、成分表を引用しました。
パッケージに書いてありますよ。
見ると、塩化ナトリウムが92%。
残りはマグネシウムやカルシウム、カリウムといったミネラル。
その他のミネラルの総称が
「にがり(苦汁)」です。
にがりだけだと
字のごとく、苦いのですが、
塩化ナトリウムと合わさったときに、
にがりは、塩のしょっぱさをまろやかに感じさせる効果があります。
つまり、塩をまぶして15分おいてなじませると、
塩味がしみ込んでいきますが、
それがにがりのおかげで
“まろやかな塩味”になる。
いいじゃないですか~(パチパチ)。
さらに!
にがりを含む塩は、にがりを含まない塩よりも、魚のくさみを除く力が高いのです。
だから、最初にまぶす塩は「粗塩」がベストなの。
これね、たぶん、ふつうの料理本には書いていないと思いますよ。
(普段、プロに講演している内容です)
だから、差がつく技なのです。
*****
では「2回目の塩」も粗塩でいいのでは?と思うかもしれません。
ところが、粗塩はしっとりしていて、均一にふりにくいんです。
ボトッと落ちてムラになりやすいんですよね。
そこで活躍するのが「焼塩」。
粗塩を炒って水分を飛ばし、サラサラにしたものです。
だから振りやすく、魚の表面に均一に広がります。
*****
ぜひスーパーの塩売り場で、裏の表示を見比べてみてください。
「にがりを含むもの」「含まないもの」が、ちゃんと書かれています。
今までなんとなく選んでいた塩が、
今日から“違いが見えてくる”。
急に、塩選びがおもしろくなって、手にとる塩が変わっちゃうと思う!
料理って、おもしろ~い!!!
☆ ☆ ☆
<レシピのいらない料理術>主宰
調理科学 評論家
木村 万紀子





